土地を決算間際に突然売却すると、消費税の面で困ることがあります。
土地の売却は消費税が非課税
消費税の計算では、もともと消費税の対象にならない取引があります。消費税の対象にならない取引のことを不課税とか、対象外といいます。
これに対して、消費税の対象にはなるけれども、消費税としての性格から課税の対象としてなじまないものや、社会政策的配慮から消費税を課税しない非課税取引というものがあります。
この不課税取引と非課税取引を間違うと消費税の計算が大きく変わってしまう可能性があるので、消費税の計算上明確に区分しなければいけません。
ここでは、「消費税がかからない」という場合は、非課税取引のことをいうこととします。
消費税の計算の考え方
納める消費税は基本的には以下の計算式で計算されます。
売上にかかる消費税(預かった消費税)- 仕入れにかかる消費税(支払った消費税)=納付する消費税の額
例えば、10,800円で仕入れた商品を21,600円で売上げた場合は、預かった消費税1,600円から、支払った消費税800円を差し引いて、差額の800円を納付することになります。
しかし、支払った消費税は全額引くことが出来るわけではないのです。差し引くことが出来る支払った消費税は、消費税のかかる売上に対応するものしか控除することができません。
売上のほとんどすべてが、消費税のかかる取引であればいいのですが、消費税の非課税売上が多い場合は計算が難しくなります。
支払った消費税が、消費税のかかる売上に対応するかどうか判断しなければいけません。
特に、土地のように金額が大きくなる非課税売上が発生する場合は注意が必要なのです。
個別対応方式と一括比例配分方式
消費税のかかる売上高が5億円以下で、かつ、消費税のかかる売上の割合が95%以上である場合は、仕入れにかかる消費税は全額控除していいことになっています。
そうでない場合は、個別対応方式か一括比例配分方式のどちらかの方法で支払った消費税を計算することになります。
個別対応方式とは、仕入れにかかる消費税を取引ごとに対応する売上が、消費税がかかる売上に対応するもの、消費税がかからない売上に対応するもの、消費税がかかる売上と消費税がかからない売上に共通して対応するもの、の3つに分けて計算する方法です。
すべての取引を区分しなければいけないので、手間がかかります。
期中はこの区分をしていない場合において、期末に突然土地を売却することになったときは、期首に遡ってこの区分をしなければいけないこともありますので、気をつけてください。
一括比例配分方式とは、仕入れにかかる消費税に、消費税のかかる売上の割合を乗じて控除する仕入れにかかる消費税を計算する方法です。
計算は、一括比例配分方式のほうが簡単ですが、一括比例配分方式を選択した場合は2年以上継続して一括比例配分方式で計算しなければいけません。
土地のように非課税売上が大きくなるようなものを売却した場合で、一括比例配分方式を選択している場合は、控除する仕入れにかかる消費税が少なくなり、納付する消費税が大きくなってしまいます。
しかも、前期に初めて一括比例配分方式で計算している場合は、当期は個別対応方式で計算することが出来ません。消費税のシミュレーションをしたうえで、土地の売却を翌期にするかどうか検討したほうがいいでしょう。
そもそも、一括比例配分方式は、2年以上の継続適用が要件ですから、明らかに一括比例配分方式が有利でなければ、選択しないほうがいいとも言えます。
たまたま土地を売った場合の消費税の計算方法もありますが、手続きが必要ですし、条件に該当しなければ適用もありません。
まとめ
個別対応方式は手間がかかりますが、期中はなるべく個別対応方式で計算できるように区分しておくことをおすすめします。決算の際に、来期以降も含めて明らかに一括比例配分方式のほうが有利であれば、一括比例配分方式を選択してもよいでしょう。
区分が出来ないから、一括比例配分方式で計算しているというのは、あまりおすすめしません。土地を売却したときなど、場合によっては、納付額が大きくなってしまうことがあるからです。
いずれにしても、土地を売却する際は、あらかじめ消費税のシミュレーションをするようにしましょう。